社会福祉士とは
社会福祉士は、昭和62年5月の第108回国会において制定された 「社会福祉士及び介護福祉士法」で位置づけられた、社会福祉業務に携わる人の国家資格です。
「社会福祉士及び介護福祉士法」には、社会福祉士とは「専門的知識及び技術をもって、身体上もしくは精神上の障害があること、または環境上の理由により日常生活を営むのに支障がある者の福祉に関する相談に応じ、助言、指導、福祉サービスを提供する者又は医師その他の保健医療サービスを提供する者その他の関係者との連携及び調整その他の援助を行うことを業とする者」とされています。
社会福祉士資格は、国家資格ですが医師や弁護士のように「業務独占」の資格でなく、「名称独占」の資格です。
「名称独占」とは、資格をもたない者が、「社会福祉士」という名称を勝手に使用してはならないということで、社会福祉士資格をもっていなければ、上記の業務につけないということはありません。しかし、社会福祉士資格をもっていることは、専門職としての水準の高さを表すものであり、今後有資格者が増加すれば、将来的に実質的な業務独占状態になることが考えられます。
社会福祉士になるには
社会福祉士になるためには、厚生大臣が指定した指定試験機関である(財)社会福祉振興・試験センターが実施する「社会福祉士国家試験」に合格しなくてはなりません。 この国家試験を受験するためには、法律に定められた受験資格が必要です。
受験資格につきましては、以下ホームページにてご確認ください。
(財)社会福祉振興・試験センターホームページ
http://www.sssc.or.jp/index.html
2.社会福祉士の仕事内容/働く場所は
様々な社会福祉サービスとクライアントを繋ぐ社会福祉士は、福祉施設・学校・行政機関・病院など、様々な場所で活躍することができるのが強みです。
社会福祉士の活躍の場について、それぞれ見ていきましょう。
・福祉事務所
福祉事務所は、市区町村における役所などで社会福祉行政の中心を担っている機関です。具体的には、福祉六法(生活保護法・児童福祉法、母子及び寡婦福祉法、老人福祉法、身体障害者福祉法及び知的障害者福祉法)に関わる支援や更生における事務業務に携わります。
福祉事務所で働く場合は公務員という扱いになるため、公務員試験に合格する必要があります。
・児童相談所
児童相談所は各都道府県や政令指定都市などに設置されています。児童福祉における専門機関のため、児童虐待・子どもの発達・非行・不登校などに関する相談に応じます。保護者による虐待などの緊急時には、児童の安全確保のため一時保護もおこないます。
児童相談所で働く場合は「児童福祉司」と呼ばれ、福祉事務所と同じく公務員となります。
・学校
学校においては、子どもたちの相談を受け、必要に応じて児童相談所や教育委員会などへの連絡・調整をおこなう、スクールソーシャルワーカーとして活躍する社会福祉士がいます。
スクールカウンセラーとの違いは、生徒本人へのカウンセリングをおこなうだけでなく、その周囲の環境要因(家庭など)にも働きかけていく点です。
・高齢者福祉関連施設
高齢者福祉に関連する施設はデイサービスセンターや特別養護老人ホームなど多様な形態があり、多くの社会福祉士が活躍しています。社会福祉士の役割の一例としては、「生活相談員」として利用者本人やそのご家族との相談に応じたり、他職種や関係機関との連絡・調整などがあります。
▼社会福祉士主事についてはこちらの記事もご覧ください
社会福祉主事とは?任用資格ってなに?仕事内容、なり方、給料まで徹底調査
・障がい者福祉関連施設
障がい者福祉サービスにも様々な形態があり、代表的なものとして就労継続支援施設やグループホームなどがあります。社会福祉士は「生活指導員」などとして配置されることが多く、身体障がいや精神障がいを抱える方が社会の一員として生活できるよう、自立訓練や就労支援をおこないます。
・社会福祉協議会
社会福祉協議会は地域福祉サービスの充実と推進、福祉コミュニティづくりの中核的な役割が期待されている組織です。社会福祉法によって定められている団体ですが、民間によって運営されているため、働く職員は公務員ではありません。
社会福祉士は、その地域での福祉課題を正確に把握し、関係者や関係機関と連携して課題解決に向けて取り組みます。社会福祉協議会の活動内容は地域によって多岐に渡るため、詳細は各自治体に問い合わせてみるとよいでしょう。
・医療機関
病院をはじめとする医療機関で働く社会福祉士の多くは、「医療ソーシャルワーカー(MSW)」として活躍しています。医療ソーシャルワーカーは、患者本人やその家族の悩みや課題に対して相談に応じ、適切な支援をおこないます。
▼医療ソーシャルワーカー(MSW)についてはこちらの記事もご覧ください
・司法関係機関
近年、少年院・更生保護施設・地域生活定着支援センターなどの司法関係機関での社会福祉士の活躍が期待されています。背景には、受刑者の高齢化・児童虐待の増加などがあげられます。出所者に対して円滑に社会福祉サービスを繋ぐことで、再犯リスクを軽減させていく狙いがあります。
・独立型社会福祉士事務所
利用者との契約に従って権利擁護(成年後見人など)や介護保険に関する業務をおこない、利用者から直接、もしくは第三者から報酬を得ます。社会福祉士として独立開業し、組織に属することがないため仕事の幅の制限が少なく、より個別具体的な支援が可能となります。
3.社会福祉士になるには
社会福祉士になるためには、公益財団法人 社会福祉振興・試験センターが実施する「社会福祉士国家試験」に合格して、社会福祉士として登録する必要があります。
3-1.国家試験の受験資格
国家試験を受験する方法は以下の通りです。
- ・4年制大学で指定科目を修めて卒業
- ・2~3年制の短期大学等で指定科目を修了したのち、1~2年以上の相談援助業務に従事
- ・ 社会福祉士短期養成施設(6ヶ月以上)を卒業
- ・社会福祉士一般養成施設(1年以上)を卒業
さらに細かく分けると、以下のように12ルートに分けられます。
短期養成施設および一般養成施設の入学要件は、各養成施設によって決められています。詳しくは、社会福祉振興・試験センターのホームページからそれぞれの養成施設にお問い合わせください。
3-2.国家試験の難易度・合格率
社会福祉士国家試験の合格基準は「総得点の60%程度」です。総得点は150点なので、90点程度が合格基準となります。そこから毎年難易度によって補正が入り、近年の合格基準点は85点~90点前後を推移していました。
2020年に実施された「第32回社会福祉士国家試験」の結果は以下の通りです。
試験日:2020年2月2日(日)
合格発表日:2020年3月13日(金)
受験者数:39,629人
合格者数:11,612人
合格基準点:88点
合格率:29.3 %
近年の合格率は25~30%前後で推移しており、約10人に3人しか受からない難関試験です。同年に実施された精神保健福祉士が62.1%、昨年に実施された介護福祉士の合格率が73.7%でした。社会福祉士の出題範囲は介護福祉士や精神保健福祉士に比べて広範囲なこともあり、福祉職の国家試験では最難関といえます。
4.社会福祉士の給料(年収)
厚生労働省の発表した「平成27年度 社会福祉士及び介護福祉士就労状況調査結果概要」によると、社会福祉士全体(性別・雇用形態問わず)の平均年収は377万円でした。正規職員で絞ってみると、男性は454万円で女性は380万円となりました。また、年齢に比例して年収も高くなる傾向にあり、50代がピークで475万円でした。
5.最後に
近年、日本では児童相談所に寄せられる児童虐待の相談件数が著しく増加しています。そのため政府は、児童虐待防止の対策として児童相談所の「児童福祉司」の数を2022年までに、約5,200人まで増やすプランを策定しました。この方針が決定された2017年時点での児童福祉司の数は3,250人だったため、約1.6倍になります。
公益社団法人 社会福祉士会のホームページより